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天使とお茶会 (第五夜)

 このお話は月花さんの『天使とお茶会』のイメージワークに対して、こちらで出てきたイメージにアレンジしてノベライズ(?)したものです。
 前回のお話(第四夜)はこちらです。

 いろいろな世界を渡りつつ、天使たちと出会う『わたし』とルーファの物語は後半へ突入。旅を続ける彼女たちを待ち受けるものとははたして……?
 今回のお話、天使とお茶会 第五夜の月花さんによるテキストはこちらでございます。


 以下別窓で本文(第五夜)へれっつらごー♪↓













 わたしが扉を開けた瞬間、そこから伝わってきたのはざわめきとたくさんの生命の気配。そして、今までにない空気の違い。
 思わず周囲を見渡すと、古い石畳に行き交う多くの人々、その間を縫うように走る馬車、天幕の下の店、石造りの建物。
 顔を上げると、それは澄み切った美しい空の青。
 その世界は不思議にも懐しい感じがした。けれど、自分のいる世界とは違う別の次元の世界だとわたしは察した。

(……ここはどこだろう?)

 わたしがそう思った瞬間、すぐ近くに見えた果物屋のおかみさんと、目が合った。
 頭と首に布を巻いた彼女に、わたしはここはどこなのかと尋ねてみると、おかみさんは豪快に笑いながら、こう答えてくれた。
「ここは果ての街だよ。お前さん、旅人だね。どっから来たのかしらないけど喉が渇いているだろ。これを持っていきな」
 そう言ってわたしに差し出してきたのは、蓋つきの透明なコップに入ったりんごジュースだった。
「あ、でもわたしお金持ってないし……」
「まあまあいいからいいから」
 受け取れません、と断ろうとしたら、おかみさんは無理矢理ジュースをわたしに渡し、眉をひそめてからこう言った。
「……街を抜けると、一本道が延々と続く。その道を行くといいよ。お前さんなら、『あれ』をどうにかできるだろうからね」
「あ、あの……『あれ』ってなんですか?」
「あー、『あれ』は『あれ』さ」
 彼女はそれ以上は言わず、お代はいいから、とわたしにそう言った。
 わたしはおかみさんにもらったジュースのお礼を言って、その店を後にした。

 活気に満ちた、楽しく、美しい街。雑踏の中を歩いていると、やがて街を守る砦と門が見えてきた。
 門を抜けたその向こうには、一本道がずっと続いている。
 わたしとルーファはその道を歩いて行くことにした。

 歩き始めてしばらくは、黄金色に実った小麦畑が広がり、その間に小さな村を幾つも通り過ぎ、やがて道はうっそうと茂る木々の間を縫うようになっていった。
 途中ジュースを飲みながら休み休み歩き続けると、今度は鮮やかな緑の草原へと続いていた。
 最初は石畳だった道は、やがて土が踏み固められたものになり、さらに行くと馬車のわだちが2本平行して続き、そして遂に獣道のように人が一人歩けるだけの幅にまでなった。
 行き交う人の数もどんどん減り、森の道を行く頃にはわたしとルーファだけになっていた。
 びゅうびゅうと吹き渡る風の中、わたしたちは草原の海を渡るように歩き、小さな丘を越えると、その向こうには海が広がっていた。
 日が暮れて空は茜色に染まり、果てしなく広がる大きな海に、オレンジ色の太陽がゆっくりと沈んでいく。
(わあ、すごく綺麗な夕暮れ……)
 しばらくその光景に、わたしとルーファは何も言わずに見惚れていた。

 太陽が沈んだ後、ふと海岸の方を見ると、黒光りする一艘の船があった。
「あれに乗っていこう」
 ルーファが海岸へと駆け足で降りていくと、わたしは慌ててその後を追うように走って、一緒に船に乗った。
 両足が甲板に上がった瞬間に、サッと白い帆が降りて、滑るように船がゆっくりと動き出した。
 太陽の残光の明るさを残している空に宵の明星がキラキラと瞬き、船はまるで沈む太陽を追いかけているようだった。
 船上には自分とルーファ以外には誰もいないので、とりあえず一晩休むことにした。

 小さな船内の寝室には寝台と毛布と枕が二人分あり、床に座ったルーファに毛布を掛けて、わたしは寝台に横たわって頭から毛布を被った。
「ルーファ、この船どこに向かおうとしてるんだろ?」
「さぁ、わたしにもわかんないね」
「そっか……そうだね」
 わたしはルーファにそう言ってから、おやすみ、と言って眠りに就いた。















 明け方に目が覚め、甲板に出てみると、船は砂浜に乗り上げていた。
 朝露が木々の葉を濡らし、ひそやかな鳥の鳴き声が聞こえてきた。
 船を下りたわたしとルーファは、草木になっている果実を採り、それを朝食代わりに齧りながら、海岸を後にして小さな獣道を歩き始めた。
 そこを辿ってしばらく歩き続けると、突然開けた場所に出て、わたしの目にあるものが飛び込んできた。
 それはいただきが雲に隠れているほどの大きな樹木。山よりも大きく聳え立つそれに、ルーファが声を押し殺してこう言った。
「……これ、世界樹だわ」
 その樹からは、ハラハラと葉が舞い散っていた。大きな樹ということもあって、無数の葉がまるで雪のように辺りを緑に染めている。
 でも、何かがおかしい。

 わたしはその直感にふと辺りを見回すと、自分とルーファ以外の動物の気配を感じない。
 本来、こんなに大きな樹木なら、そこかしこから鳥や動物たちの鳴き声が聞こえてくるはずなのに―……。


(これは一体、どういうこと?)


 そう疑問に思った次の瞬間、静寂を破るように唐突な獣の鳴き声が辺り一面に響き渡った。
 大気を引き裂くようなその声は、大樹の根元から聞こえてきた。
 わたしとルーファは慌ててその場所を見ると、そこに樹の幹を食い荒らしている動物がいた。
 大きな樹なのに相当な部分がすでに失われていて、葉が散るのも無理はない。
 それを見ていたわたしたちはハッとして我に返ると、大樹を荒らす動物がこちらに気づいた。
 鱗と蝙蝠の形の翼は鋼のように黒く光り、ギラギラした赤い目は邪悪に光り、牙は鋭く、滴り落ちるよだれが大地を焼いていく。
 その動物の正体は、大きな黒い竜だった。


(街のおかみさんが言っていた「あれ」は、この竜のことだったんだ!)


 わたしが容易に察しがついたところで、脳内に警報が大きく鳴り響いた。 
 その危険信号が発したところで、わたしはゆっくりとその場から後ずさりすると、激しい吼え声をあげながら、竜がこちらへと飛び掛ってきた。


(うわ、危ない!!)


 敵意むき出しの赤い瞳を持つ竜は、大きな爪で大地を掘るようにして襲撃をかけてきた。
 あわててバックステップでそれをかわし、わたしは右手の平に意識を集中した。
 目を半眼にし、イメージで手の中に光の球体を作り出す。それはやがて形を変えると、一本の水晶が姿を現した。
 中指の先から手首までの長さはあるそれは、全ての面にびっしりとバーコードが刻まれ、それを手にしたわたしは、水晶の先端を竜に向けた。
 そこから放たれたのは、一本の閃光。しかしその光はわずかに竜の体を掠るだけだった。
 直後に竜の爪がこちらへ伸び、わたしはそれを避けようとしたが、掠るようにして右の二の腕に赤い線が走ると、そこから血が流れ出した。
「いたっ……」
「大丈夫?!」
 ルーファがわたしに向かって叫ぶと、大丈夫とすぐに返して、次の攻撃をぎりぎりで避けた。
 竜はわたしたちに向かって容赦ない攻撃を続け、わたしとルーファはそれを防ぐのに精一杯だった。 
 
 体力も精神力も消耗し、自分の身体はあちこち傷だらけになり、ようやっと立っていられる状態で、ルーファも同様になんとか足を地に付けているようだった。
 しかし、竜は弱くなるどころか、ますます強くなってきている。
(このままじゃ、わたしもルーファもやられてしまう!)
 手にした水晶を強く握り締めた時、黒竜がわたしに向かって前足を大きく振り上げた。
 引き裂こうとする爪がこちらに迫り来るのに、身体がすくんで動かない。
 わたしは目をぎゅっとつぶったその直後、辺りに大きな悲鳴が聞こえた。
 恐る恐る目を開けると、前足から血を流しながら悶える竜と、力なく地面に横たわる、鹿の身体が視界に入った。


「―ルーファ!!」


 わたしが慌てて起き上がり、ルーファの元に駆け寄ると、その体は血まみれになっていた。
「……よく聞いて、あの竜は……剣や武器では倒せない。今ようやく…分かったの」
「どうやって倒すの?」
「それは言葉―『言霊』をつか……うの……」
 呼吸も絶え絶えに、ルーファはわたしに話し続けた。
「でもね、『死ね』とか……『消えろ』って言っても駄目。……そういう冷たい言葉では、剣と同じ―」

 その言葉の後に、ザシュ、という音がした。
 わたしが思わず顔をあげると、目の前には、真っ赤な瞳。
 黒竜が前足で何かを踏み潰している。その足の下から流れ出す血。
 それを見たわたしは、水晶を両手に持って後ずさると、竜が一歩を踏み出した。もう一歩後に下がると、また一歩竜が前に出る。
 その繰り返しが何度続いたのか、踏み出した足が崩れそうになり、慌てて後方を見ると、そこにはもう地面がなかった。
 急な崖になっていて、もうこれ以上逃げ場がない。
 黒竜は勝ち誇ったように、嫌な笑みを浮かべた。
―傷ついたわたしに向かって、哂っている。
 

 わたしは覚悟を決めて目を閉じ、ほんの少しの沈黙の後、ゆっくりと目を開けた。

『冷たい言葉では剣と同じ』

―それでは倒せない。
 
 わたしをかばって命がけで傷つき護ってくれた、ルーファのためにも。
 そう決意した後、わたしは息をゆっくり大きく吸った―その時だった。


(……タ……スケ……)


「えっ?」

 
 頭の中に聞こえてきた、弱弱しく悲痛な声。



(――タスケテ)


 その声はルーファのではなく、違うもの、としたら……もしかしてこの竜、わたしに助けを求めてる―?
 でも、どうすればいいの?
 わたしがそう疑問に思っていた時、ふと遠くに微かな生命の波動を感じた。

(ルーファ……?)

 黒竜のさっきの攻撃で、虫の息状態の彼女の生命。

 まだ、大丈夫―わたしは、大丈夫だから。

 こちらへと飛び掛ってきた黒竜に対し、 重い身体をなんとか動かしたわたしは、手前に転がり込む形で間一髪で攻撃を避けた。
 ゆっくりと体勢を立て直す。身体のあちこちが傷つき、出血と痛みが止まらない。
 それでもわたしは、あきらめなかった。

 ……救いたい。

 狂気で暴走しているこの生命を、なんとしてでも自分の手で。


 世界を揺るがすような咆哮をあげながら、竜が大きく口を開けて襲い掛かってくる。
 わたしは渾身の力を込めて、内部から振り絞るようにして大声をあげた。
 右手に持った水晶の先端を竜に向けて。




「―――――――――――!!」





 その刹那、全ての時間が停止したかのように、沈黙が訪れた。
 静まりかえったその空間には、自分と竜しかいないようで。
 爪が、わたしの身体を切り裂くのを遠く感じた―けど、痛みは全く感じなくて―……。


 目の前にいる黒い竜は、呆然と立ち尽くし、爪についたわたしの赤い血を食い入るように見つめている。
 でもその表情はうろたえ、驚いているように見えた。



 どれくらいの時間が経ったのかわからないけど、気がつくと竜の赤い瞳から、ぱたぱたと何かがこぼれ落ちていた。

(――涙?)

 ああ、そうか……泣いてる、この子は泣いているんだ。
 意識がどんどん薄れていく中で、黒い鋼の鱗が、淡く白い光を放ち始めた。
 それは竜の体から、まるで光が生まれていくようで。
 悲しい悲しい泣き声をあげながら、竜は光の中へと消え、わたしもその中へと取り込まれていく。

 意識が完全に途切れる直前に、わたしは小さくつぶやいた。
 それは彼に対しての謝罪と、感謝の言葉―……。


 








「……ここでしたか」 
 今にも枯れて倒れそうな大樹の傍らに、うつぶせになって倒れている白い服の女性と、血だらけになって横たわる日本鹿。
 そこに舞い降りたのは、大きな白い翼を持った一人の青年。
 黒い髪と黄色い肌、光に透けると黄金に輝く瞳を持つ彼の手が鹿の身体に触れると、その表情が変わる。

(これはまずい、事切れる前か……)

 そうして今度は女性の身体に手を置くと、青年は小さく首を縦に振った。

(―まだ、彼女は助かるかもしれない!)

 青年はふと鹿の方に視線を向けると、その身体から少しずつ光が放たれている。

「なるほど……そういうことだったのですね」

 鹿の体が真っ白い光に包まれ、それがピンポン玉くらいの大きさの球体へと姿が変わると、スッと青年の元へと飛来した。
 彼は女性の身体を抱き上げ、光の球体を手にすると、翼を広げて空高く舞い上がり、どこか遠くへと飛び去っていった。












 




 ……あ、真っ白。

 ゆっくりと瞳を開けたわたしは、首を左に動かすと、それは白い天井と壁だった。
 反対に右に傾けると、大きな硝子窓の向こうに青い空が広がっている。
 意識がまだぼんやりとしているところで、突然わたしの視界に入ってきた、見知らぬ青年の顔。
 こちらの顔を覗き込んでくる人物は、その背中に白い翼を持ち、優しい微笑みを浮かべていた。
「……やっと目が覚めたようですね、よかった」
 それを見たわたしは、彼の顔を見つめて訊ねてみた。
「あの、あなたは……誰ですか?」
「私は大地を司る天使、ウリエルと申します。先程、負の波動を感じて島を訪れた時、世界樹の傍に貴方が倒れていたのです」
「……わたしを助けてくれたんですね、ありがとうございます」
 ウリエル様にお礼を言ったわたしは、そこであることに気がついた。
「あの、実はわたし……あの世界樹の場所で黒い竜を助けようとした時に、こう言ったんです」



『―あなたに『光』を与えます』



「無我夢中で叫んだから、今になって思い出したんだけど……。そうしてその後に、こんなことも言ったの」



『……ごめんね。『ありがとう』』



「それでなんでそう言ったのかなって……。わたし、ルーファも、あの竜も助けられなかった……。でも、気づいたことがあったの」
「何をですか?」
「『言葉』なの。自分にも他人にも、光を与える『言葉』」
 わたしがそう言った後、ウリエル様はこう返してくれた。
「その『言葉』は、生命の大切さ、尊さをあらわす言葉だったからだと思いますよ」
 彼のその返答に、わたしは思わず涙が溢れ出し、止まらなくなった。
「うん……わたしもそう思う……」
「だから貴方は今『ここ』にいるのですよ」
 ウリエル様がそう言われたところで、わたしはふと気がついた。
 身体の痛みが全くない。それどころか手や腕を見ると傷が跡形もなく消えている。
 そこでようやく上半身を起こしたわたしは、小さくつぶやいた。
「―わたし、あの時にもう死んだと思っていたのに……」
 わたしの顔を見つめながら、ウリエル様はゆっくりとした口調でこちらに話しかけてきた。
「貴方の中に、異なる二つの生命の波動を感じます。その生命たちが貴方を生きながらえさせたのですよ」
「その一つって、もしかして……黒い竜?」
「そうです。それともう一つ、あなたにごく近しい命のようです」
 分かるでしょう?と言いながら、ウリエル様はわたしの胸元を見つめていた。そこへ自分の視線を移すと、二つの淡い光の球体が微かに光を放っていた。
 そのうちの一つが静かにわたしの中へとに吸い込まれると、もう一つの球体はふわふわと浮遊しながら明滅した。 

「……ルーファ……?」

「ええ、あなたと一緒にいた日本鹿ですね。私が駆けつけた時にはもう息を引き取る直前で、彼女は光の球体に姿を変えたんです」
 その光の球が身体へと染み込むようにして吸い込まれると、身体がフッと軽くなった。
「これをどうぞ飲んでください」 
 ようやく泣き止んだわたしにウリエル様が湯飲みを手渡し、それを飲むと、身体全体にじんわりと温かさが広がっていく。
 その飲み物の味は少し梅の酸味があるけど、とても飲みやすいものだった。
 梅干しの種を取って潰したのに、すりおろしたしょうがと醤油を加え、温かい番茶を注いだお茶。
「これ、梅醤番茶だ……」
「はい」
 ウリエル様が笑顔で答えた後、今度はお粥の入ったお椀とお匙を渡してくれた。
「玄米と粟と小豆のお粥です。これを食べて元気になってください」
 彼の温かな心遣いに、わたしは嬉しくてまた泣いてしまった。
 お粥を食べたわたしは、その後再び眠りに落ちた。







 

 明くる日、怪我が癒えたわたしを、ウリエル様は世界樹がある島へ連れて行ってくれた。
 傷つき枯れそうになっていた世界樹は、奇跡的に甦っていた。
 幹の傷痕は無残に口を開けていたけれど、それでも新たな命を繋いでいて、白銀に輝く小さな花が枝を飾っている。
 小鳥のさえずりや動物たちの鳴き声もあちこちから聞こえ、生命の波動が樹木全体に広がっていた。


「ありがとう。貴方のお陰で世界樹は護られました」
 ウリエル様はわたしを優しく抱きしめてきたので、それを静かに受け止めた。
 それに、と彼はこう言葉を続けた。

「―闇の門が甦りました」

 そう言って、ウリエル様が世界樹の根元を指差すと、そこには、人一人通れる大きさの穴がぽっかりと開いていた。










 To be continue...
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