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かこのきおくのものがたり 『出会いと桜と青い空』

 今回はうちの過去の記憶の一部を書き出してみました。
 遠い昔にとある惑星に調査員として活動していた時のお話です。

 










 青い空に舞う、薄紅色の花びら。
 ひらひらと風に乗っていくのをわたしはぼんやりと見つめていた。

 

 アカデミー(大学)を卒業し、晴れて念願の外部惑星の調査員になって一年が経つ。
 周囲の友人知人たちからは予想だにしない職務に就いた事に驚いていたが、あの出会いがなければ、わたしはここにいなかっただろう。

 




―その日は調査員になるための研修日の初日。
 講堂でのオリエンテーションを済ませて、各自担当の教官に当たる調査員がいる部屋に向かおうとしている時の事。
 わたしが行く部屋がある建物は講堂から一番遠く離れている場所にあり、そこから歩いていく途中で、わたしは大きな桜の木が立っているのを見つけた。
 薄紅色の花が満開に咲き誇り、その美しさに思わず足を止めて暫くの間眺めていると、突然背後から声をかけられた。

「どうしましたか?」
 思わず振り返ると、そこにはまっすぐで短い黒髪に、濃紺色の制服を着た長身の青年が立っていた。
「あ……、桜を見ていたんです」
 ふと突拍子に青年に返事をすると、彼はにこにこと微笑んだ。
「そうですか……ここの桜はかなり昔から立っていますから」
 樹齢千年はいってるでしょう、と付け加えて、彼は視線を桜の方へと移した。
「あなたはここの調査員の人ですか?」
 青年にそう尋ねると、ええ、と小さく頷いた。
「わたし、これから調査員になるための研修を受けるんです。なんか厳しい所だって話を聞いたんですが」
 それを聞いた青年は、首を小さく縦に振った後、こう言ってきた。
「厳しいって言っても、配属された部署によりけりだからなぁ……俺なんか外部―外回り担当に配属されたから、三年前の研修の時は大変だったなぁ」
「そうなんですか……」 
「貴方はどこの部署なんです?」
「ええと、情報処理担当です」
「あーあそこかぁ……そこは当たった教官によっては厳しいかもしれないな」
 それを聞いたわたしは、うわどうしよう、と不安になった。
「情報処理っていうのは担当する作業によっては大変だったりするからね。送られたデータを纏めたり、それを今度は別のデータベースに転送したりとやる事がいろいろあるから」
「そんなに大変な部署なんだ……」
「まぁそうだけどね。女性の調査員の大半は情報処理担当だけど、最近は外回り担当に志願する人も増えてきてる。でもまだ外部よりは作業量は少ない方だしね」
 青年がわたしに答えたその直後、ピピピ、という電子音が彼の制服のポケットから鳴り響いた。
「おっと、呼び出しがかかったな。それじゃ、研修がんばってね」
 彼はポケットから取り出した携帯を手に持ったまま、空いたもう一方の手で手を振って駆け出した。
「はい!ありがとうございます」
 わたしも手を振り返し、青年が桜の木からすぐ近くの建物に入るまでずっと振り続けた。


……彼の姿が見えなくなった所で、わたしは青年の名前と配属部署を訊ねるのを忘れていることに気がついた。
(しまった、あの人どこの部署だったか聞けばよかったなぁ)
 それに追い討ちをかけるかのように、キーンコーンと鐘の音が構内に鳴り響き、わたしはその場から急いで目的の場所へと走り出した。











「結局、あのお兄さんとはあれから会ってないんだよなぁ……」
 まあ外部担当だから仕方ないけど、と思っていた所で。
「―あら、こんな所にいたのね」
 その声にハッとして目を瞬きすると、わたしのすぐ横には上司である女性秘書官が立っていた。
 オフホワイトのパンツスーツ姿に、焦げ茶のストレートのセミロングを後ろでふんわりと束ねている。
「はい。ちょっと一人でお花見してました」
「まあ、そうだったの。この桜の木は綺麗だからね~」
 秘書官さんは目を細めて桜の木を見上げてから、わたしにこう言った。
「なんか貴方を見ていると、昔の私を思い出しちゃった」
「えっ?秘書官さんのことですか?」
「ええ、私が若い頃に研修生だった時のことだけど……それはまた後で話すわね」
 彼女はにこにこと微笑んだ後、そろそろ戻りましょう、と声をかけてきた。

「……あの桜の木の下でね、私は主任と初めて出会ったの」
 執務室に戻る途中の広い廊下で、秘書官さんが私に話し始めた。 
「彼の方が二つ年上なんだけど、アカデミーは同期で卒業だったの。その当時は私は貴方と同じ情報処理担当で、彼は外回り担当……格好いいけどちょっと変わってる人だったわ。……まさかその数年後にあの人が私のパートナーになるとは思わなかったけど」
「そうだったんですか」
「まあ、貴方も私同様に彼に大変な目にあってるけど、あの人は貴方のことをちゃんと理解してるから」
 だから安心して、と秘書官さんは私にそう言った後、先に執務室へと入っていった。


 執務室の扉に手を触れようとした時、ふわ、と目の前に薄紅色の花びらが宙を舞った。
 私は地面に落ちそうになっていたそれを、両手であわてて受け止めて手を合わせると、スッと開かれた扉の向こうへと入っていった。  






  


  

 

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